平安時代 鬼 妖怪

妖怪に関する伝承の中でも特に有名なもののひとつに「百鬼夜行(ひゃっきやこう)」があります。平安時代や室町時代には深夜になると鬼が群れを成して徘徊すると信じられていました。この行列は百鬼夜行と呼ばれ、当時の人々には大変怖れられていたのです。 平安時代に京で暴れていた鬼で、その後丹波の国の大江山に住み着き、酒を飲み、人をさらっては食べてしまう最強の鬼でした。 しかし毒入りの酒で弱らされ、坂田金時(金太郎でおなじみですね)・源頼光により斬り殺され、退治されました。 この時代の代表的な妖怪の一つは「鵺(ぬえ)」である。 鬼は定型化が進み、また天狗、大蛇、狐、狸などが目立ち、「猫又」もいる。 平安時代後期において『地獄草紙』などの仏教絵画に鬼などの表現が見られるものの、視覚的表現として妖怪が具体的に姿を現すのは中世、鎌倉時代に入って以降である 。 平安時代では、鬼を「 モノ 」と区別してとらえていました。 妖怪の鬼は、実体があって 目で見て触れる存在 です。 いっぽう、モノは実体をもたず、霊魂のような 目に見えない存在 でした。 登場する妖怪:天狗、鬼 . 平安時代というとなんとなく上品で優雅なイメージがあるかもしれませんが、実際は鬼や妖怪が跋扈する恐ろしい時代だったのです。 平安時代に刊行された妖怪の資料 今昔物語集. 目次鬼とは日本各地に古くから伝説が残る日本で最も有名な妖怪です。有名な桃太郎をはじめとして多くの昔話に敵役として登場しており、現代でも節分の日には鬼の面を被る習慣が残っています。鬼は敵役のイメージが強いことから、怖ろしい様や凄まじい様を表す言葉としても使われています。妖怪という存在がメジャーでなくなった現在の日本においてこれだけの影響を残していることからも、鬼という存在が日本人にとって特別であることがわかります。 現代で語られる昔話に登場する鬼は、頭に角を生やした大男のような姿で描かれています。口には牙が生え、爪も鋭く伸びているその姿は人間とは似て非なるものです。赤色の肌をしているものが多いとされていますが、黒や青色の鬼も存在しており、腰には虎の毛皮を巻いているといわれています。しかし、伝承に残る鬼は必ずしもこのような姿をしているとは限りません。格の高い鬼は人に化けることもできたとされており、美男美女の姿で人間に近づくこともあったといわれています。また、鬼という存在は怪異全般を指す言葉でもあったため伝承される鬼の姿は常に一定ではなく、中には姿が見えないものまで存在しました。 鬼という名前には「おぬ(いない、かくれる)」という意味があります。これは鬼という存在が人間とは住む世界の違う「見えない者」であることに由来しています。鬼には不思議な力があるとされており、多くの怪異の原因になる存在であると考えられていました。また、平安時代の中期までは鬼は「もの」と呼ばれており、悪霊や不吉なものを表す意味もあったのです。その名前が「おに」であれ「もの」であれ、鬼の名前には人々の畏怖の念が込められていたことがわかります。 先述したとおり怖ろしいものというイメージの強い鬼ですが、日本各地には善い鬼の伝説も多く存在しています。鳥取県には鬼が村を守ったという言い伝えが残っており、鬼を悪としてではなく善いものとして信仰しています。また、青森県では鬼を神として祀る風習がありますが、これも鬼が人を助けたという伝承が存在するためです。このように鬼は妖怪としてだけではなく神や神聖な存在としても扱われることがあります。浜田廣介の「泣いた赤鬼」のように人間と仲良く暮らす鬼の話も存在しています。悪と善の伝承が極端なことも鬼の特徴といえるのかも知れません。 その名前や行動から鬼は様々な姿や意味を持つ存在だということがわかりました。しかし、鬼はその特徴によっていくつかのグループに分類することが可能です。ここでは鬼の種類についてご紹介します。霊鬼(れいき)と呼ばれるこの種類の鬼は、人の死後にその魂が変化したものだとされています。いわゆる「悪霊」のことであり、これらも鬼に属するものだと考えられています。元々「鬼」という字は中国では悪霊を指す言葉でした。多くの鬼は怨霊から生まれたとされており、人を殺して仲間を増やすと考えられていました。これに属する鬼たちは人に災いをもたらすとされており、人々から恐怖の対象として扱われました。 ときとして山や土地を守る神々も鬼と呼ばれることがあります。この種類の鬼は一つ目であるといわれており、守り神としての性質が強い存在でした。守り神だからといって必ずしも人間を守るとは限りませんが、人を助けたと伝承されている鬼の多くはこの山神に属していると考えられています。同じく山神と呼ばれる妖怪には天狗が存在していますが、鬼と同様に邪悪な存在でありながらも人を助けたという逸話が残っています。天狗については関連記事にまとめています。関連記事: 存在のわからぬもの、不思議な現象も鬼として扱われることがありました。妖怪の多くは当時の人々にとっての未知の自然現象や未確認生物の目撃から生まれたといわれています。これらに対する恐怖によって生まれたのが、このグループに属する鬼たちです。日本各地に伝わる様々な妖怪については関連記事にまとめています。関連記事:日本では各地に様々な鬼の伝説が残っています。ここではその中でも特に有名なものをご紹介します。昔、丹波の国の大江山には「酒呑童子(しゅてんどうじ)」と呼ばれる鬼が住んでいたといわれています。酒呑童子は数ある鬼を部下に持つ鬼の統領であり、各地で悪さを働いたとされています。神隠しにより民や姫を誘拐する酒呑童子に対し、当時の帝は平安時代の武将「源頼光」を大江山に送り込みます。正面から挑んでは勝ち目のない鬼たちに対して、源頼光は毒入れの酒を飲ませる策に打って出ます。これによって昏睡した酒呑童子と仲間の鬼たちは源頼光に一網打尽にされることになりました。 茨木童子(いばらきどうじ)は酒吞童子の右腕とされている伝説の鬼です。その性別や立ち位置については諸説あり、女の鬼で酒吞童子の恋人だったとする説もあります。酒吞童子と一緒に京都を荒らしまわった茨城童子でしたが、先述した源頼光の策によって苦戦を強いられることになりました。茨城童子はこの戦いにおいて唯一生き残った鬼だとされており、渡辺綱に腕を切り落とされながらも逃げ延びることに成功しています。 京都には酒吞童子と人間の子どもである「鬼童丸(きどうまる)」の言い伝えが残っています。源頼光が酒呑童子を退治した際、鬼たちに拉致された女たちも同時に解放されました。しかし、その中の一人に酒呑童子の子どもを妊娠している女がいたというのです。女は気が触れてしまっており、故郷に帰ることもできないまま一人で鬼童丸を産み落としました。鬼の子である鬼童丸は生まれた時から鋭い歯が生えており、7歳の頃にはイノシシを仕留めて食べていたといわれています。鬼童丸は父の敵として源頼光の命を狙いますが、後に返り討ちにされています。 平安時代の伊勢物語には「鬼一口」という逸話が登場します。お互いに愛し合ったある男女が身分違いによって結婚できなかったために駆け落ちをすることになりました。しかし、突然の豪雨に襲われたため、通りがかった蔵の中に女を潜ませ男は外で一晩中見張りをすることにします。ところが朝になって蔵に入るとそこに女の姿はありませんでした。このように突然人が消える現象を、昔の人は鬼によって一口で食べられてしまったため悲鳴も上げることができなかったと解釈したのです。 妖怪に関する伝承の中でも特に有名なもののひとつに「百鬼夜行(ひゃっきやこう)」があります。平安時代や室町時代には深夜になると鬼が群れを成して徘徊すると信じられていました。この行列は百鬼夜行と呼ばれ、当時の人々には大変怖れられていたのです。百鬼夜行を目撃した人は死んでしまうという伝説があったため、人々は深夜に外出することを控えていたといわれています。しかし、伝承の中には百鬼夜行に遭遇しても読経することや朝になったことで助かったという話も存在しています。 鬼の伝説の中には人が鬼になったとするものも多く存在します。「餓鬼(がき)」は生前に贅の限りを尽くしたり、強欲を貪った人間の成れの果てとされた鬼です。餓鬼になった人間は手を触れた水や食べ物がすべて火に変わってしまい、永遠に続く飢餓の中で苦しみ続けるといわれています。その姿は骨のように瘦せ細っており、腹だけが醜く膨れ上がっているとされてます。餓鬼は人間への戒めのために生まれた鬼なのかも知れません。 実在した修験道の開祖「役小角(えんのおづの)」は強力な法力を有し、鬼をも操ったという伝説が残っています。その役小角が使役したとされる鬼が「前鬼・後鬼(ぜんき・ごき)」です。この二匹の鬼は夫婦でしたが、悪さをしていたところを役小角に捕まってしまいます。前鬼・後鬼は子どもも平気で殺す凶悪な鬼でしたが、役小角に子どもを隠されたことで親の悲しみを知り、改心したといわれています。奈良県にある大峰山には前鬼・後鬼のものとされる墓も存在しています。 福島県には実在したとされる「鬼婆」の墓が残っています。あるとき紀伊国の僧が安達ヶ原を通りがかった際に、宿を借りたいと一軒の家に声をかけました。すると親切そうな老婆が出てきて快く僧を家へ招き入れたのです。老婆は薪を取ってくるので奥の部屋は絶対に覗かないようにと言付けて外に出ていきました。しかし、好奇心に負けた僧が奥間を覗くと、そこには大量の人間の骨が転がっていたのです。老婆に食べられてしまうと感じた僧は慌てて家を抜け出しました。しかし、僧が逃げたことに気付いた老婆は恐ろしい鬼婆に姿を変え、僧の後を凄まじいスピードで追いかけてきました。死を覚悟した僧が観音菩薩像を取り出し経を唱えると、菩薩から光の矢が放たれ鬼婆を貫きます。僧はこの場所に絶命した鬼婆の墓を作り遺体を埋葬しました。その後、いつしかこの土地は黒塚と呼ばれるようになったのです。日本では昔から災いは鬼が運んでくると考えられてきました。それを代表するのが「悪鬼(あっき)」です。伝染病が流行するのは悪鬼の仕業だとされており、病気が大流行すると鬼を払う儀式が各地で行われました。ちなみに節分の豆まきで払われる鬼はこの悪鬼だといわれています。 本心とは逆のことをいう人のことを「天邪鬼(あまのじゃく)」と呼びますが、読んで字の如くこの天邪鬼も鬼の仲間です。天邪鬼は人の心を読むことができ、それを利用して悪事を働くといわれています。伝承される内容は各地によって様々で、山林で人の声真似をする音だけの天邪鬼や、山のように巨大な天邪鬼の逸話も残っています。天邪鬼は占い師の魂が変化したものという説があるため、人の心を読むことができる能力があるとされるようになりました。 陰陽道では北東の方角は「鬼門(きもん)」と呼ばれ、鬼が出入りする場所があるとされてきました。そのため鬼門は現在でも不吉な方角だとされており、場所を決める際には避けなけれならないといわれています。鬼門という概念自体は中国から伝わったものですが、不吉な方角としての信仰は日本独自で進化した考え方であることがわかっています。古い建物などでは北東に門を設置することを避けるために、歪な形状をしているものも存在します。 四国地方には巨大な鬼の伝説が数多く残っています。手洗鬼(てあらいおに)と呼ばれるこの鬼は、山と山を跨いで海で手を洗うほど大きいとされています。また、香川県の飯野山には手洗鬼の足跡とされるものも存在しています。手洗鬼の跨いだ距離は全長12キロメートルを超える瀬戸大橋よりも長いとされており、この鬼が如何に大きいかがわかります。 平安時代の武将である「藤原秀郷(ふじわらのひでさと)」には百々目鬼(とどめき)という鬼との逸話が残されています。あるとき秀郷が狩りの帰り道で「この近くには百の目を持つ鬼が出没する」という噂を耳にします。噂を確かめるために夜まで待っていると、両腕に無数の目を持ち体長3メートルを優に超える大きな鬼が現れました。秀郷が最も妖しく光る鬼の目に向かって矢を射ると、鬼は悶え苦しみ遂には動かなくなってしまいました。しかし、鬼の体からは炎と毒が立ち上り近づくことができなかったといいます。翌朝、同じ場所に戻るとそこには黒く焼け焦げたような土だけが残されていたそうです。 日本の古典太平記にも鬼に関する興味深い逸話が記されています。平安時代の豪族である藤原千方という人物は強力な4匹の鬼を使役していました。突風を操る「風鬼」、洪水を起こす「水鬼」、全ての攻撃を弾き返す「金鬼」、気配を消すことができる「隠形鬼」、これらの鬼は四鬼と呼ばれ、使役する藤原千方の力を絶対的なものとしていました。あるとき藤原千方は四鬼の力を使って朝廷を支配しようと謀反を起こします。しかし、紀朝雄(きのともお)の歌によって四鬼を封じられた藤原千方はこの戦いに敗北しました。四鬼は忍法の原型になったと考えられており、これらが忍者のルーツであるといわれています。多くの伝説を残す鬼にはモデルになった生物がいたのではないかといわれています。ここでは鬼の正体として特に有名な説をご紹介します。鬼の正体が金属工だという説が存在します。金属工とは鉱山で鉄を掘ったり、それらを加工する職人を指した言葉です。鬼の伝承の中には山や金棒などの金属工を思わせる点が多く存在しています。危険な仕事をする金属工の男たちは体格がよく、鬼の特徴にも一致します。また、鬼伝説が存在する山の多くは鉱山地帯だったこともわかっています。 バイキングは1000年ほど前に海を荒らし回った海賊です。このバイキングが鬼の正体なのではないかとする説も有力視されています。バイキングは角が生えた帽子を被っており、外国人であるために当時の日本人から比べれば相当に大きな体つきをしていました。また、白人であるため日焼けすると赤みを帯びた肌になり、毛皮を着用していた点も鬼と一致しています。外国人に馴染みのない当時の日本人がバイキングを目撃すれば、それを鬼と見間違えても仕方がありません。また、有名な酒吞童子の正体も日本にやってきたドイツ人だったのではないかといわれています。 世間一般とは関わることをしない訳ありの世捨て人が鬼の正体だったとする説です。鬼は毛皮などを腰に巻いているとされていますが、これが自然の中で生活するサバイバーのイメージに一致しています。昔の日本では生活が苦しいことを理由に生まれた子どもを山に捨ててしまう風習があったといわれています。そんな捨てられた子どもたちの中には厳しい山の環境に適応して生き延びた者も少なからずいたはずです。悲しいことに彼らは捨てられた後も鬼として人々から迫害を受けていた可能性があるのです。  いかがでしたか?最も有名な日本の妖怪鬼についてご紹介しました。現在でも日本の文化の一部になっている鬼。彼らは本当に実在したのでしょうか?次の記事 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